鋼道路橋は、架設環境や維持管理体制(長期管理体制)等に基づいて適切な塗装系を選定し、塗装系の性能を確実に発揮させるための素地調整方法、塗装方法、塗替え周期などを検討します。塗装は、鋼材表面に形成した塗膜が腐食の原因となる酸素と水や、塩類等の腐食を促進する物質を遮断(環境遮断)し鋼材を保護する防食法です。
防食機能を有する下塗り塗料、下塗りと上塗り塗膜の付着性を確保する中塗り塗料、中塗りと下塗り塗膜の紫外線などによる劣化を防ぐ耐候性に優れた上塗り塗料を塗り重ねたもので鋼材を保護します。また、上塗り塗料は着色ができ景観・美観性を向上させる機能も有しています。
①鋼材の板厚減少にいたる腐食を防止するため、ジンクリッチペイントなどの防食下地を用いた耐食性に優れた重防食塗装系を基本とします。
②環境との調和に配慮し、環境汚染対策や「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(グリリーン購入法)等の関連法規に基づき、防錆顔料及び着色顔料及びドライヤーに鉛やクロム等の有害な重金属を含む塗料を使用しない。
③塗装作業者の健康を配慮し、発がん性のある物質を含有するタールエポキシ樹脂塗料を使用しない。
④地球温暖化や光化学スモックの原因のひとつされるVOC(揮発性有機化合物)を削減するため、塗替塗装には光化学スモッグの発生が少ないとされる弱溶剤形塗料を使用します。また、VOC量を大幅に削減した低溶剤形塗料や水性塗料を用いた環境にやさしい塗装系の適用も検討する事が良いとされています。
⑤塗装コストの削減のため、一度に厚膜に塗装できる塗料を適用して塗り重ね回数を減らした塗装系などの適用を検討する事が良いとされています。
⑥塗膜の経年変化を把握するため定期的に塗膜点検を行い、鋼橋塗装データベースを作成して塗膜の残存寿命を予測するなどによって、合理的・効率的に塗膜を維持管理することが良いとされています。
重防食塗膜の防食機構の模式図
JSSS(社)日本鋼構造協会より抜粋
鉄塔は、大きく分けて電波塔と送電塔があります。送電鉄塔は、亜鉛めっき鋼材を用いているものが多く、近年、亜鉛メッキ鋼材の劣化が進行しています新設時から塗装で対応しているものもありましたが、現状、亜鉛メッキの劣化や塗装の劣化も進行してきています。近年、塗装工不足の顕在化しつつ、且つ将来的な塗装基数増加も見込まれています。
そのことから耐候性、防食性にすぐれた塗料を選択し塗装周期の延伸化が望まれています。また、鉄塔塗料の選択にはかなり制約があります。例えば、停電期間等の作業制約による省工程塗料や作業による飛散防止の低飛散塗料などが求められています。
電波塔は電波を送信する送信所の設備のひとつであり、電波干渉や建造物による電波の遮断を避けるため高構造物となり、地域のシンボルタワーとなる事が多いです。1958年竣工時の東京タワーは錆止めペイントとフタル酸樹脂塗料が使用されており2013年までに10回の塗替えが行われてきましたが、第11回に向けて低VOCでより塗替えインターバルの長期化が検討されいます。
現在は超長期的な防食性、外観保持性が求められ、耐久性の向上を図ると共に環境負荷低減も含めた塗装システムが求められます。
①高所作業となることから、作業中に落下・飛散した塗料による下部周辺の家屋、自動車、農作物などへの被害トラブル防止として低飛散性が求めらます。
②亜鉛めっきに対する付着性や防食性が求められます。
③十分な素地調整が困難な場合が多く、3~4種ケレン程度の素地調整でも下地との付着製が求められます。
④市場ではLCC低減を目的に高耐久性、工程短縮の動きがあります。
①シンボルタワーとなる事が多く、塗装には超長期の防食性、耐久性、外観保持が求められ、更には製作過程において環境への配慮からVOC(有機化合物)排出量削減などの高い技術が求められます。
プラント構造物についての防食設計は基本的な塗装システムのすべてを含んでいると言っても過言ではありません。このため、塗装の計画では塗膜の耐久性を支配する大きな要因(立地環境条件、装置類の使用条件など)について整理して施工条件に合ういくつかの塗装システムを選びます。そのすべてのコストと推定耐用年数を考慮して、塗装システムを決定します。
塗装には新設塗装・塗替塗装があり、いずれの場合もさまざまな条件や制約を考慮して塗料の種類・塗装仕様・塗装回数素地調整の方法と程度などを検討し、経済的考察も加えて塗装システムを決定します。
プラント塗装は設備の保護・美観・色彩調節・安全標識等の役割をもちます。
①保 護 : 防錆・耐水・耐薬品・耐熱・耐摩耗・耐汚染・耐油等の目的、用途に合った塗装を検討します。
②美 観 : 環境調和した色彩で美観を与えます。
③色彩調整 : 機械・建物を色彩調整し、人体疲労の軽減と作業環境を改善する目的があります。
④安全標識:産業安全・交通安全・航空障害標識等の災害防止標識の役割があります。
原油タンク、溶鉱炉、薬液タンクなど
コンクリート構造物は100年の耐久性があると言われてきました。しかし近年、環境の変化・コンクリートに対する劣化メカニズムの解明・診断方法の進歩により、コンクリートの耐久性が見直されてきており、特に既設構造物に対しては、補修や補強による延命化が急務となっています。
コンクリート構造物の対策としては、表面に被膜を作る保護塗装や、表面から水分浸透抑制および塩害や中性化などによるコンクリート構造物の劣化進行を抑制し、耐久性を向上することを目的として含浸材を塗布したり、コンクリートの断面欠損による第三者被害の防止の剥落防止や、構造上に耐久性が要求される場合などはアラミド・炭素繊維等で補強を行います。
①塗膜にはコンクリート構造物の劣化を防止する機能やコンクリートが持っている欠点を補う機能(例えばひびわれ、汚れ等)、及び周辺環境にふさわしい色彩に調整する機能があり、さらに、これらの機能を長期間維持する事が必要です。
②含浸材等はコンクリートの外観をそのまま残し劣化進行を抑制し耐久性を向上させる事ができます。
③連続繊維工法は耐震性(曲げ強度やせん断補強)が軽量かつ高強度で出来また、重機が不要で溶接等の煩雑な作業がなく、施工が安全かつ簡便に行う事ができます。
社団法人日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会(JASP)より抜粋
社団法人日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会(JASP)より抜粋