プラスチックや、木と違い金属は素材そのままの状態で放置しておくと、直ぐに空気中の酸素と結合し酸化物を表面に形成します。これがいわゆる「さび」です。金属用の塗料はまず素材の金属をさびから守ることが重要になります。
工業用金属塗料は素材の金属に密着させ、防錆性を持たせた下塗塗料と、実際に使用される環境下での製品の保護と物理的機能を付与させる上塗り塗料の2つが必要になります。
金属には沢山の種類があり、各元素を組み合わせることにより色々な特性を持った素材になります。鉄は大変強度が強く、安価に製造出来ますがとてもさびやすい素材ですので防錆力を必要とした下塗り塗料が重要になります。ステンレスは鉄をベースにクロムやニッケルを含有させた合金鋼で、耐食性が向上し、さびにくくなりますので、その表面質感を魅せる製品が多く、上塗りのクリア等で美観を活かした仕様が多く見られます。アルミニウムは鉄と比べると比重が軽く、鉄の約1/3程度です。よって軽量化による性能向上を求められる輸送機器や建築製品などで多く使用されています。素材そのままでは塗膜の密着が非常に悪い素材なので、塗装前処理の酸化皮膜が重要になり、塗料自体もその酸化皮膜との密着性が必要になります。その他にもアルミニウム、亜鉛、マグネシウム等の非鉄金属を組み合わせた合金類は量産性の優れたダイカスト(鋳造方式)製品などにも使用され、塗装においても下塗塗料での素材との密着が重要視されています。
金属素材は多種多様であり、それぞれに適した塗料を選定しない剥離などのと大きなトラブルの原因になります。また塗装前の前処理は重要で、素材にあった十分な化成皮膜処理や脱脂、物理処理(研磨等)をしないと適応塗料であっても密着不良等の問題が起きる場合がございますので注意が必要です。
プラスチックは社会や暮らしの中の様々なところで使用されています。金属に比べ錆びず、軽量で、熱や加圧によって様々な形状に成型・加工出来るからです。
プラスチックは着色成型が可能であり、有る程度の美観を付与することが出来ますが、①色調が単一でメタリック色調などの着色成型が難しい ②成型時にウェルド跡等の成型表面欠陥が生じることが多い ③耐候性・耐薬品性・耐溶剤性等の性能が劣る場合がある、等の欠点もある為、素材に合わせた塗装をすることによって、多色仕上げや金属的外観の付与など、塗膜性能を向上させることが出来ます。
塗装用素材として使用されるプラスチックの種類には様々な樹脂があり、大別するとメラミン樹脂やポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリスチレンやポリプロピレン・アクリル・ABSなどの汎用熱可塑性樹脂、ナイロンやポリカーボネート・PPO(ノリル)・PPE(ザイロン)などの熱可塑性エンジニアプラスチックになります。
熱硬化性樹脂は、一度加熱して硬化させるともはや軟化せず、どんな溶媒にも溶けなくなる特性をもつ樹脂で主に食器等の日用雑貨や自動車バンパー・自動車部品等に使用され耐溶剤性が良いことからウレタン塗料にて塗装されることが多いです。
熱可塑性樹脂は、加熱によって軟化し,成形できるようになり,それを冷却すれば固化する特性(これには可逆性もある)を有する樹脂で主に電気部品や玩具・自動車内外装材・雑貨などに使用されています。 熱だけでなく溶媒にも溶解性があり,溶液から成形されることもあります。 耐熱性や耐薬品性は熱硬化性樹脂に劣りますが実用性能があり、冷却という物理変化だけで固化するため成形速度が速く,工業的に広く使用されています。塗装は耐溶剤性の低さを利用し、専用に組成された塗料及びシンナーの溶剤分によって表面を荒し、溶解させて密着力を高めるアクリルラッカー塗料や、塗装後の耐溶剤性・光沢・硬度・肉持感等アクリルラッカー塗料ではクリア出来ない塗膜性能を要求される場合には、2液型のアクリルウレタン樹脂塗料を使用します。
塗装されたプラスチック塗装品の強度を考える上で、認識すべき前提条件があり、
①塗装した成型品の機械的強度は塗装前の状態に比べ必ず低下している
②塗装により本体成型品に潜在していた、問題点(部位による強度違いや強度の方向性)などが顕著化しやすくなる
③塗装による強度の低下の原因は、塗膜に発生したクラックのノッチ効果(応力集中)と樹脂の残留応力化での耐溶剤性の低下
などです。
塗装素材用のプラスチック樹脂は多種多様であり、それぞれに適した塗料を選定しないと大きなトラブルの原因になります。また同一素材でも成型場所・成型条件・グレード等により若干性質が異なる場合がありますので、塗装の際は予めテスト塗装を行い、塗膜性能の確認を行うことが必要になります。
プラスチック用塗料のシンナーは素材に対するアタック性がデリケートなものになります。クラックなどのトラブルの元になりかねない為、シンナーの選定には十分注意して下さい。
木は人間や環境に優しい素材です。木の製品には自然のぬくもりが感じられる効果があり、社会や暮らしの中で昔から使用されてきました。現在、工業製品向け木部塗料は建築内装材や家具、ボード類等に使用され素地の保護と美観の付与を重点に置いて使用されています。素地の保護では主に水分や虫等を原因とする防腐・防虫・防カビを目的とし、美観では木が持つ天然の木目の美しさを生かした仕様が多く見られます。
木は生物であり、内部構造はいくつもの細胞組織によって成り立っているため不均一で、温度、湿度等の外的条件や乾燥・漂白・接着・研磨などの処理方法により素地面が多様に変化します。木の種類としては大きく分けて針葉樹と広葉樹に分けられ、針葉樹は材質が柔らかく(軟材)、加工が容易で長尺の材が得られるため、土木建築・建具類・船舶などに使用されます。広葉樹は材質が硬く(硬材・堅木)、長尺の材が得られにくいため、家具や什器・室内建材等に使用されます。
木部塗料として必要な性質は
①作業性が良いこと
②仕上がりがよいこと
③肉持ちが良いこと
④塗膜の可とう性が良いこと
⑤密着・耐水性が良いことが上げられます。
④の可とう性とは、木材質の乾湿による歪みやそれにより生じるワレを防ぐ性質で、塗膜の強靱さとこの伸縮に耐える弾力性が必要になります。木部塗装では美観の付与は素地着色と塗膜着色に分けられます。塗膜着色は一般の塗料と同じですが、素地着色は木の持つ木目を生かし、木材固有の美しさを高めることが出来ます。
木製品への塗装の場合に注意しなければならないのは、素材による吸い込みムラで、これを防ぐにはサンドペーパー等による木地研磨が重要になってきます。サンドペーパーの当て方や、番手の種類は合っているか、逆目の処理が出来ているか等の確認が必要です。